韓国の個人・法人への支払と源泉徴収 — 非居住者の判断手順と20.42%・10%
韓国のフリーランスや企業にデザイン料・翻訳料・開発費などを支払う経理担当者向けのページです。源泉徴収の要否から、税率、円換算、納付、届出書の扱い、多く徴収したときの手続までを順に説明します。
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対象韓国の個人・法人に報酬を支払う日本の事業者(経理担当)。自社は日本に住所や事務所があり、支払先は日本に事務所などの拠点を持たない場合です。
結論
- 韓国で行った作業だけの対価は国内源泉所得に当たらず、源泉徴収はしません[1]。著作権(ソフトウェアを含む)の譲渡や利用許諾の対価が含まれれば、使用料として源泉徴収します[2][3]。
- どちらに当たるかは、契約の名目だけでなく目的や内容から判断されます。開発委託費や契約書のないイラスト制作費が使用料とされた裁決があります[4]。
- 税率は20.42%です。その支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」が自社を経由して提出されていれば、受益者が韓国居住者である使用料は10%です。10.21%ではありません[3][5][6]。
- 外貨で支払う場合は、原則として支払期日の電信買相場で円に換算します[3]。納付は原則として徴収した月の翌月10日までに、非居住者用の納付書で行います[7]。
- 届出書が間に合わなかった支払は20.42%で徴収します。差額は支払先が様式11で還付を請求し、自社は証明と提出を受け持ちます[5][8]。
このページの内容韓国の個人・法人に支払うときの源泉徴収 — 判断の順番
韓国の個人・法人に支払うときの源泉徴収 — 判断の順番
非居住者と外国法人に日本の所得税がかかるのは、日本国内で得た「国内源泉所得」だけです[1]。そのうち源泉徴収の対象になるものを支払う人は、支払の際に源泉徴収して納付します[7]。
送金先が韓国の口座でも、それだけで源泉徴収が不要になるわけではありません[7]。国外で支払う場合でも、自社が日本に住所や事務所を持っていれば、国内で支払ったものとみなして源泉徴収します[3][7]。
判断は次の順番で進めます。
- 支払先は非居住者・外国法人か:日本に住所も1年以上の居所もない個人は非居住者です。日本に本店も主たる事務所もない法人は外国法人です[9]。支払先が日本に恒久的施設(事務所などの拠点)を持つかどうかで課税方法が変わるため[1]、このページは拠点を持たない場合を扱います。
- 韓国で行った作業だけの対価か:成果物の著作権の譲渡や利用許諾を含まない対価かを見ます。韓国で行った作業(役務の提供)だけの対価なら国内源泉所得に当たらず、源泉徴収はしません[1]。
- 著作権などの使用料・譲渡の対価が含まれるか:著作権(ソフトウェアを含む)や意匠などの利用許諾・譲渡の対価は使用料です[2]。20.42%で源泉徴収し、その支払日の前日までに届出書が提出されていれば10%です(受益者が韓国の居住者の場合)[3][5][6]。
- 日本に来て行った役務の対価か:支払先が個人なら、国内で行った人的役務の提供の対価は国内源泉所得で、原則20.42%です[1][3]。租税条約で免除・軽減される場合があるので、税務署か税理士に確認してください。支払先が法人の場合は、源泉徴収の対象になるかも含めて税理士・税務署に確認してください。
| 対価の中身 | 日本での扱い | 自社の源泉徴収 |
|---|---|---|
| 韓国で行った作業(役務の提供)だけの対価 | 国内源泉所得に当たらない。人的役務の対価で国内源泉所得になるのは、国内で行ったもの[1] | しない |
| 著作権(ソフトウェアを含む)・意匠などの利用許諾の対価 | 国内で業務を行う者から受ける使用料で、その業務に係るもの[2]。日韓租税条約12条の使用料[6] | 20.42%。その支払日の前日までに届出書が提出されていれば10%(受益者が韓国の居住者の場合)[3][5] |
| 著作権などの譲渡(買取り)の対価 | 使用料と同じ号の「譲渡による対価」[2]。条約でも原則として使用料と同じ扱い[6][10] | 20.42%。その支払日の前日までに届出書が提出されていれば10%(受益者が韓国の居住者の場合)[3][5] |
| 日本に来て行った作業の対価 | 国内で行った人的役務の提供の対価[1] | 個人なら原則20.42%。条約で免除・軽減される場合がある[3]。法人の場合は税理士・税務署に確認 |
デザイン料・翻訳料・開発費が使用料に当たるか — 質疑応答と裁決
国税庁の質疑応答事例に、韓国に住む大学教授に論文の韓国語訳を依頼した例があります。翻訳文は買取りの契約でした。回答は、著作物の権利の譲渡の対価で使用料に当たるため、源泉徴収が必要というものです[10]。
この回答は、買取りの契約という照会の事実関係を前提にしています[10]。翻訳料ならすべて使用料になる、という意味ではありません。
国税不服審判所の平成21年12月11日の裁決は、国外の法人(国名は伏せられています)への支払を扱っています。ゲームソフトの開発委託費とイラスト制作費が、どちらも著作権の使用料または譲渡の対価とされました。支払った日本の会社は、源泉所得税の納税告知と不納付加算税の賦課決定を受けています[4]。裁決のポイントは次のとおりです。
- 何の対価かは、契約の名目だけでなく、目的や内容から合意の本体を認定して判断する[4]
- 支払った会社は、契約で「請負の対価」と定め、金額も作業量で計算したと主張したが、認められなかった[4]
- 著作権などの一切の権利を発生と同時に両社で2分の1ずつ共有する、という定めは、制作者から発注者への共有持分の譲渡を定めたものと判断された[4]
- 個別の契約書がなく、著作権の帰属を書面で定めていなかったイラストも、使用料または譲渡の対価とされた。理由は、ソフトの販売に欠かせないこと、帰属について両社が開発委託契約と同様に認識していたこと、発注者が実際に使い、制作者が異議を唱えていなかったこと。これらから日本での複製・使用の承認が認められた[4]
支払の前に、契約書や発注書で次の点を確かめます。
使用料の税率は20.42%、届出書が間に合えば10%
使用料の源泉徴収税率は、国内法では金額にかかわらず20.42%です[3]。
2027年(令和9年)1月1日以後に生ずる所得からは、内訳が所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税になります。合計税率は所得税率×102.1%なので、20.42%のまま変わりません[11][3]。
日韓租税条約12条は、使用料の受益者が韓国の居住者である場合に、日本で課す税を使用料の額の10%までとしています[6]。条約の限度税率(国内法の税率以下のもの)が適用されるときは、復興特別所得税と防衛特別所得税はかかりません。税率は10.21%ではなく、ちょうど10%です[3][11]。
日韓租税条約には、BEPS防止措置実施条約の規定も適用されています。取引等の主たる目的の一つが条約の特典を受けることである場合に、その特典を認めない規定です。源泉徴収される税には、2021年1月1日以後に生ずる課税事象から適用されています[12]。
| 場合 | 税率 |
|---|---|
| 韓国で行った作業だけの対価 | 0%(源泉徴収しない)[1] |
| 使用料(譲渡の対価を含む)で、その支払日の前日までに届出書が提出されていない | 20.42%[3][5] |
| 使用料(譲渡の対価を含む)で、その支払日の前日までに届出書が提出されている | 10%(受益者が韓国の居住者の場合)[3][5][6] |
| 日本に来て行った作業の対価 | 個人なら原則20.42%。条約で免除・軽減されるかは税務署か税理士に確認[3]。法人の場合は税理士・税務署に確認 |
源泉徴収の対象額は支払額です。消費税額が含まれていれば含めた金額が対象ですが、請求書で報酬の額と消費税額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを対象にできます。税額の1円未満は切り捨てます[9]。
「手取りで○円」と決めた契約では、手取額を税込みの金額に逆算し、その金額をもとに源泉徴収します[13]。国税庁の計算例は居住者向けの税率の場合だけで[14]、20.42%や10%の逆算式を示した資料は確認できていません。計算は税務署か税理士に確認してください。
外貨建ての支払を円に換算する
外貨建ての支払は、円に換算してから税率を掛けます。外貨で支払う場合の換算は、原則として支払期日の電信買相場(TTB)で行います。支払が著しく遅れていなければ、実際に支払った日の電信買相場でも差し支えありません[3]。支払の仕方ごとの細かい扱いは次のとおりです。
| 支払の仕方 | 換算の方法 |
|---|---|
| 外貨で決めた金額を円で支払う | 契約などで定めた換算方法で計算した、支払う円の金額[9] |
| 外貨で支払い、契約などで支払期日が決まっている | 支払期日の電信買相場。期日が月・週などの期間で決まっていればその末日、それより前に支払えば支払日。相場は自社の主要取引金融機関のもの(自社が電信買相場を公表していれば自社のもの)[9] |
| 外貨で支払い、支払期日が決まっていない | 実際に支払った日の電信買相場[9] |
| 支払期日以後に、外貨を円で買って支払う | 支払が著しく遅れていなければ、その購入に適用された為替相場で換算した金額でもよい[9] |
どの日のどの相場で換算したかを、支払の記録と一緒に残しておくと、後から確かめやすくなります。
納付は翌月10日まで — 非居住者用の納付書を使う
租税条約の届出書を受け取ったとき・間に合わなかったとき
届出書を受け取ったとき
- 自社の所轄税務署長に、最初に使用料を支払う日の前日までに提出します[19][5]
- 書面の場合は、支払先から正副2部を受け取り、正本を税務署に提出します[18]
- 支払先が氏名・名称を明らかにする措置を講じている場合は、書面の代わりに電磁的方法で届出書の内容を提供することもできます。受ける自社は、提供を適正に受ける措置、提供者を特定する措置、画面表示と書面出力の措置を講じる必要があります[5]
- 自社から税務署へは、書面の代わりにPDFなどのイメージデータをe-Taxで送信することもできます[5]
- 記載事項に異動があれば、支払先は異動後最初に支払を受ける日の前日までに出し直します[5][18]
- 様式3の注意事項が居住者証明書の添付を求めているのは、使用料が免税になる場合です[19]。日韓租税条約の使用料は免税ではなく10%への軽減なので、この定めには当たりません[6]
届出書の提出先の欄には、支払者の所轄税務署を書くことになっています[19]。依頼するときに、自社の所轄税務署の名前を支払先に伝えておきます。支払先が書く欄の意味は、租税条約に関する届出書(様式3)の書き方にまとめています。
最初の支払に間に合わなかったとき
届出書が出ているかは、支払ごとに判定します。その支払日の前日までに提出されていなければ、その支払は条約の10%ではなく、国内法の20.42%で源泉徴収します[5]。後の支払でも、その支払日の前日までに提出されていれば10%です[5]。
20.42%で徴収した分と10%との差額は、支払先が還付を請求します。支払先は還付請求書(様式11)と届出書を作って自社に渡します。自社は還付請求書の「4」の欄の記載事項を証明し、両方を自社の所轄税務署に提出します[8][5]。
請求できるのは、納付があった日から5年の間です[8]。支払先には、国税庁のA3-14の案内ページを伝えると、手続を確かめてもらいやすくなります。
誤って源泉徴収した・多く徴収したとき
多く徴収した理由によって、使う手続が変わります。
| 場合 | 手続 | 請求する人 |
|---|---|---|
| 届出書が支払日の前日までに提出されず、国内法の20.42%で徴収した | 租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求(様式11)[8] | 支払先。様式11と届出書を自社経由で提出し、納付があった日から5年以内。自社は「4」の欄を証明して提出する[8] |
| 自社が正当税額を超えて納付した | 源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求[20]。下の囲みの二つの場合に当たるかは確認が必要 | 自社(源泉徴収義務者)。納付した日から5年以内[20] |
誤納額の還付請求には、納付したときの徴収高計算書の写しと、誤納額が生じた事実を書いた帳簿書類の写しを付けます[20]。
反対に、源泉徴収すべき対価から徴収しなかった場合は、支払者が納税告知や不納付加算税の賦課決定を受けることがあります。上の裁決はその例です[4]。
よくある質問
韓国のフリーランスにデザイン料を支払います。源泉徴収は必要ですか。
韓国で行った作業だけの対価なら不要です[1]。デザインの著作権を譲渡してもらう、または利用を許諾してもらう対価が含まれるなら、使用料として20.42%で源泉徴収します。受益者が韓国の居住者で、その支払日の前日までに届出書が提出されていれば10%です[2][3][5][6]。どちらに当たるかは、契約の名目だけでなく目的や内容から判断されます[4]。
支払先の請求書に源泉徴収税額が書かれていません。源泉徴収しなくてよいですか。
請求書の書き方では決まりません。源泉徴収の義務は支払者にあるので、対価の中身から自社で判断します[7]。使用料に当たるなら、請求書に書かれていなくても支払の際に源泉徴収します[3]。
出典
- [1]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [2]
所得税法 第161条第1項第11号(国内源泉所得 — 使用料又は譲渡による対価)
e-Gov法令検索 現行法令(2026年10月20日確認)一次資料
- [3]
国税庁 No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [4]
国税不服審判所 平成21年12月11日裁決(裁決事例集No.78 208頁)
2026年10月20日確認一次資料
- [5]
国税庁 No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [6]
財務省 日本国と大韓民国との間の租税条約(第12条 使用料)
2026年10月20日確認一次資料
- [7]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [8]
国税庁 A3-14 租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求(様式11)
2026年10月20日確認一次資料
- [9]
国税庁 令和8年版 源泉徴収のあらまし「第10 非居住者又は外国法人に支払う所得の源泉徴収事務」
令和7年9月1日現在の所得税法等関係法令一次資料
- [10]
令和7年8月1日現在の法令・通達等一次資料
- [11]
国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A(Q5・Q13・Q14)
令和8年5月1日現在の法令・通達等一次資料
- [12]
財務省 我が国と韓国との間の租税条約に対する本条約(BEPS防止措置実施条約)の適用関係の概要
2026年10月20日確認一次資料
- [13]
国税庁 所得税基本通達 181〜223共-4(税引手取額で定められている場合)
2026年10月20日確認一次資料
- [14]
国税庁 No.2792 Q&A 手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [15]
国税庁 令和8年版 源泉徴収のあらまし「源泉徴収制度について」
令和7年9月1日現在の所得税法等関係法令一次資料
- [16]
国税庁 納付書の記載のしかた(非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書)
令和8年以降分(2026年10月20日確認)一次資料
- [17]
国税庁 No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [18]
国税庁 A3-5 租税条約に関する届出(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)
2026年10月20日確認一次資料
- [19]
2026年10月20日確認一次資料
- [20]
国税庁 A2-18 源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求
最終更新日 2026年5月26日一次資料
最終確認日