請求書の源泉徴収|対象の報酬・税率10.21%・消費税の扱いと計算例
報酬から源泉徴収される個人事業主・フリーランスが請求書を作るときに必要なことをまとめました。源泉徴収がかかる報酬とかからない報酬、税率と1円未満の切捨て、消費税を区分して書く効果、「差引ご請求金額」までの書き方を、2026年10月23日現在の国税庁・e-Govの資料で説明します。
- 最終確認日
- 出典17件
- 約15分で読めます
対象日本に住む個人事業主・フリーランスで、原稿料・デザイン料・翻訳料・講演料などを取引先に請求する方が対象です。受け取る側が法人(会社)の場合は、原則として源泉徴収はありません。韓国など日本国外に住む方は規則が異なります。「源泉徴収をするのは誰か」の最後の囲みをご覧ください。
結論
- 源泉徴収をするのは報酬を支払う側です。法人や、給与を支払っている個人事業主などが、個人に原稿・デザイン・翻訳・講演などの報酬を支払うときに差し引きます。給与を誰にも支払っていない個人事業主(家族への青色事業専従者給与も払っていない人)など、給与の源泉徴収義務がない個人が支払う場合や、受け取る側が法人の場合は、原則として源泉徴収はありません[1][2][3][4]。
- 対象は法律で列挙された報酬だけです。プログラミングやシステム開発の報酬は、その列挙に含まれていません[1][5]。
- 税率は、1回の支払額のうち100万円までが10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。1円未満の端数は切り捨てます。2027年以降も合計の税率は変わりません[6][7]。
- 請求書で報酬と消費税額を明確に分けて書けば、報酬の額だけが源泉徴収の対象になります。分けていなければ、消費税を含めた額が対象です。適格請求書でなくても、分けて書けば同じ扱いです[8][9]。
- 書き方の例:報酬185,000円+消費税18,500円=合計203,500円、源泉徴収税額は185,000円×10.21%=18,888円(1円未満切捨て)、差引ご請求金額は184,612円です[6]。
このページの内容源泉徴収の対象になる報酬 — 仕事の種類で決まる
源泉徴収の対象になる報酬 — 仕事の種類で決まる
所得税法204条1項は、居住者に報酬・料金を支払う者に、支払の際に所得税を徴収して納付することを求めています。対象になるのは、同項の各号に列挙された報酬・料金だけです[1]。個人事業主・フリーランスに関係が深いのは、次の区分です。
| 区分 | 含まれるものの例 |
|---|---|
| 原稿の報酬 | 原稿料、書籍等の編さん料・監修料、演劇・演芸の台本の報酬[1][10] |
| デザインの報酬 | グラフィックデザイン(広告・ポスター・包装紙等)、パッケージデザイン、工業デザイン、インテリアデザイン、服飾デザインなど[10]。ポスター用のイラストもデザインの報酬に当たります[11] |
| さし絵・作曲・写真 | さし絵、作曲・編曲の報酬、雑誌・広告などの印刷物に掲載するための写真の報酬[1][5][10] |
| 翻訳・通訳・校正など | 翻訳、通訳、校正、脚本・脚色、書籍の装丁、速記、版下の報酬[5][10] |
| 講演・教授 | 講演料、技芸・スポーツ・知識の教授や指導の報酬(語学や資格講座の講師謝金など)[1][5][10] |
| 著作権などの使用料 | 著作権(著作隣接権を含みます)・工業所有権の使用料[1] |
| 士業の報酬 | 弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、建築士などの業務に関する報酬[1] |
モデル、外交員、芸能の出演料など、ほかの区分もあります。全体の一覧は国税庁の「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」で確認できます[4]。
列挙にない仕事 — プログラミング・システム開発、ウェブサイト制作
プログラミングやシステム開発の報酬は、所得税法204条1項と所得税法施行令320条1項の列挙に含まれていません[1][5]。列挙にない報酬は、個人に支払う場合でも源泉徴収の対象になりません。ただし、プログラムの利用を許諾する対価(ライセンス料)として受け取る場合は、著作権の使用料に当たることがあります。契約の形で迷うときは税理士か税務署に確認してください[1]。
迷いやすいのは、デザインと開発をまとめて請け負うウェブサイト制作です。国税庁の通達が例示するデザインに、ウェブサイトのデザインは挙げられていません[10]。デザインとその施工を一括で請け負う場合について、通達はネオンサイン・広告塔・庭園などを例に、対価をデザインの報酬と施工の対価に区分し、デザインの報酬について源泉徴収するとしています。デザインの部分が極めて少額なら、源泉徴収をしなくて差し支えないともしています[10]。ウェブサイト制作にこの考え方が当てはまるかは、通達に書かれていません。
- 請求書では、デザイン料と開発・コーディング費を別の明細にしておきます。どの明細を源泉徴収の対象にするかを、取引先と話し合いやすくなります。
- 取引先と判断が分かれたときは、取引先(支払う側)の所轄税務署か税理士に確認してください。源泉徴収の義務を負うのは支払う側です[1]。
源泉徴収をするのは誰か — 支払う側で決まる
同じデザインの仕事でも、誰が支払うかで源泉徴収の有無が変わります。給与について源泉徴収義務のない個人が支払う報酬・料金(原稿料・デザイン料・講演料・士業の報酬など)は、源泉徴収の対象外です[1][2]。
| 支払う側 | 源泉徴収 |
|---|---|
| 会社などの法人 | します[1][2] |
| 従業員や家族(青色事業専従者)に給与を支払っている個人事業主 | します。実際に給与から差し引く税額がなくても、給与の源泉徴収義務がある個人に当たります[12][3] |
| 給与を誰にも支払っていない個人事業主、会社員などの個人 | しません[1][2][3] |
| 常時2人以下の家事使用人だけに給与を払っている個人 | しません[1][2] |
支払う側が個人の場合、給与の源泉徴収義務がある個人に当たるかは、報酬を支払うべき日の現況で判定します[12]。取引先が個人事業主なら、源泉徴収をするかどうか、請求書を作る前に確認しておくと、差引額の書き直しを防げます。
受け取る側が法人の場合、報酬・料金のうち源泉徴収の対象になるのは、馬主である法人に支払う競馬の賞金だけです[4]。法人として受け取るデザイン料や原稿料には、源泉徴収はありません。
税率と計算 — 100万円までは10.21%、超える部分は20.42%
消費税を含めるか — 報酬と消費税額を分けて書けば報酬の額だけ
報酬・料金の額に消費税等が含まれている場合、源泉徴収の対象は、原則として消費税等を含めた金額です。ただし、受け取る側の請求書等で報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、報酬・料金の額だけを対象にして差し支えありません[8][6]。
この取扱いは、インボイス制度が始まった後も変わりません。ここでいう請求書等は、請求書や納品書などであればよく、適格請求書である必要はありません。適格請求書発行事業者でない事業者(免税事業者など)の請求書でも、報酬と消費税等の額を明確に分けて書けば、報酬の額だけが対象になります[9]。
| 書き方 | 源泉徴収の対象 | 源泉徴収税額 | 差引ご請求金額 |
|---|---|---|---|
| 報酬と消費税額を分けて書く | 185,000円(報酬の額) | 18,888円 | 184,612円 |
| 税込203,500円とだけ書く | 203,500円(税込金額) | 20,777円 | 182,723円 |
税額は、185,000円×10.21%=18,888.5円、203,500円×10.21%=20,777.35円で、どちらも1円未満を切り捨てています[6]。分けて書くと、この例では差し引かれる額が1,889円少なくなります。
請求書の書き方 — 報酬 → 消費税 → 源泉徴収税額 → 差引ご請求金額
源泉徴収税額を請求書に書くことは、所得税法上の義務ではありません[15]。源泉徴収の義務を負うのは支払う側だからです[1]。それでも書いておくと、差し引かれる額と振り込まれる額を、請求の時点で取引先と確認できます。
書く場合は、報酬額・請求額とは別に「源泉徴収税額」の項目を設けて、それぞれの金額を書くのが一般的です[15]。合計(税込)の下に源泉徴収税額、その下に差し引いた後の「差引ご請求金額」を並べる形は、実務の慣行です。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| ロゴデザイン一式 | 150,000円 | |
| 名刺デザイン | 35,000円 | |
| 小計(税抜) | 185,000円 | 150,000+35,000 |
| 消費税(10%) | 18,500円 | 185,000×10% |
| 合計(税込) | 203,500円 | 185,000+18,500 |
| 源泉徴収税額 | −18,888円 | 185,000×10.21%=18,888.5 → 1円未満切捨て[6] |
| 差引ご請求金額 | 184,612円 | 203,500−18,888 |
合計欄の書き方の例(上の計算例)
小計(税抜) 185,000円 消費税(10%) 18,500円 合計(税込) 203,500円 源泉徴収税額 −18,888円 差引ご請求金額 184,612円
- 取引先が源泉徴収をするかどうか、どの明細を対象にするかを確認します。
- 明細ごとに報酬の額を書き、消費税額を報酬と分けて書きます。
- 源泉徴収の対象額に税率を掛け、1円未満を切り捨てて源泉徴収税額を出します[6]。
- 合計(税込)から源泉徴収税額を引いた額を、差引ご請求金額として書きます。振込額はこの金額になります。
1回の報酬が100万円を超える場合の例
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 報酬(税抜) | 1,200,000円 | |
| 消費税(10%) | 120,000円 | 1,200,000×10% |
| 合計(税込) | 1,320,000円 | |
| 源泉徴収税額 | −142,940円 | (1,200,000−1,000,000)×20.42%+102,100[6] |
| 差引ご請求金額 | 1,177,060円 | 1,320,000−142,940 |
よくある間違い
- 1円未満を四捨五入する:源泉徴収税額の1円未満は切り捨てます。18,888.5円は18,889円ではなく18,888円です[6]。
- 100万円を超えたら全額に20.42%を掛ける:20.42%になるのは100万円を超える部分だけです。1,200,000円なら142,940円で、1,200,000円×20.42%の245,040円ではありません[6]。
- 自分で立て替えた交通費・宿泊費を対象から外す:旅費や宿泊費も、原則として報酬・料金に含まれます。含めなくてよいのは、支払う側が交通機関やホテルなどに直接支払った、通常必要な範囲の金額です[6][12]。
- 名目を変えれば対象外になると考える:報酬の性質があれば、謝礼、取材費、材料費、車賃などの名目でも源泉徴収の対象です[12]。
- 法人として受け取るのに源泉徴収税額を書く:受け取る側が法人なら、原則として源泉徴収はありません[4]。
- 給与を支払っていない個人事業主からの支払にも書く:給与の源泉徴収義務がない個人は、報酬から源泉徴収をしません[1][2]。ただし、家族に青色事業専従者給与を払っている個人事業主は、源泉徴収をします[3]。
支払の後 — 納付、支払調書、確定申告
よくある質問
源泉徴収税額は請求書に書かないといけませんか。
書く義務はありません。源泉徴収の義務を負うのは支払う側です[1][15]。ただ、取引先から書くよう求められることは多く、書いておけば振込額の食い違いを防げます。書く場合は、合計(税込)の下に源泉徴収税額と差引ご請求金額を並べます。
免税事業者でも、消費税を分けて書けば報酬の額だけで計算してもらえますか。
はい。報酬と消費税等の額を分けて書く請求書等は、適格請求書でなくてもかまいません。適格請求書発行事業者以外の事業者の請求書でも、明確に区分されていれば報酬の額だけが対象になります[9]。
ウェブサイト制作の報酬は源泉徴収の対象ですか。
一律には決まりません。プログラミングやシステム開発は源泉徴収の対象の列挙に含まれていません[1][5]。一方、デザインの報酬は対象で、ウェブサイトのデザインの扱いは国税庁の通達に書かれていません[10]。請求書ではデザイン料と開発費を別の明細にし、取引先と判断が分かれたら、取引先の所轄税務署か税理士に確認してください。
取引先から、手取りで10万円にしたいと言われました。報酬はいくらにしますか。
報酬が100万円以下(手取りで897,900円以下)の場合、手取り額を(100−10.21)%で割り、1円未満を切り捨てた額が報酬になります。手取り100,000円なら、100,000÷89.79%=111,370.97…で報酬は111,370円、源泉徴収税額は111,370×10.21%=11,370円(1円未満切捨て)、差引は100,000円です[7]。消費税を分けて書く場合、この計算で手取りが100,000円になるのは消費税を除いた部分です。
出典
- [1]
所得税法 第183条・第184条・第204条・第205条(e-Gov法令検索)
e-Gov法令検索 現行法令(2026年10月23日確認)一次資料
- [2]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [3]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [4]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [5]
e-Gov法令検索 現行法令(2026年10月23日確認)一次資料
- [6]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [7]
国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A(Q1・Q5・Q6・Q10)
令和8年5月1日現在の法令・通達等一次資料
- [8]
国税庁 消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて(平元直法6-1)「3 報酬・料金等所得等に対する源泉徴収」
平成26年3月5日課法9-1改正(2026年10月23日確認)一次資料
- [9]
令和3年12月9日公表(2026年10月23日確認)一次資料
- [10]
国税庁 所得税基本通達 204-6〜204-10(原稿等の報酬・デザインの範囲)
所得税基本通達(2026年10月23日確認)一次資料
- [11]
国税庁 質疑応答事例 コピーライター、イラストレーター及びレタリングライターへの報酬
令和7年8月1日現在の法令・通達等一次資料
- [12]
国税庁 所得税基本通達 204-1〜204-5(報酬、料金等の性質を有するもの・旅費・源泉徴収義務者の範囲)
所得税基本通達(2026年10月23日確認)一次資料
- [13]
国税庁 No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [14]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [15]
freee 請求書に源泉徴収税額の記載は必要?計算方法や書き方・対象について解説
2026年5月26日更新(実務の慣行・2次出典)
- [16]
国税庁 No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [17]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
最終確認日