国外事業者のインボイス登録は必要?韓国から日本の取引先に請求する場合
国外事業者がインボイス登録をするときの手続と負担、取引先にとって登録の利点がある取引とない取引を説明します。日本の取引先の経理から登録番号を聞かれたときの返信例も載せています。
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対象韓国など日本国外に住みながら日本の事業者に請求する個人・法人(日本に事務所などの拠点を持たない方)。
結論
- 国外事業者も「適格請求書発行事業者の登録申請書(国外事業者用)」で登録を申請できます。登録するかどうかは任意です[1]。
- 日本に事務所などがない国外事業者(特定国外事業者)は、消費税の税務代理人(税理士など)と納税管理人がいないと、登録を拒否されることがあります。登録後に欠けた場合は、取り消されることがあります[2][1]。
- 登録している間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも納税義務は免除されません[3]。日本に恒久的施設がなければ、簡易課税・2割特例・3割特例は使えず、一般課税で計算します[4][3]。
- 受注制作のネット納品などの国外取引と、リバースチャージの対象取引では、登録しても取引先の仕入税額控除は変わりません[5][1]。
- 登録が取引先の控除に影響するのは、消費者向けの電気通信利用役務と、日本で行う課税取引です。それも取引先が一般課税で仕入税額を計算する場合に限られます[1][6]。
このページの内容国外事業者もインボイス登録はできる — 申請の流れ
国外事業者もインボイス登録はできる — 申請の流れ
適格請求書を交付できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。国外事業者は、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書(国外事業者用)」を提出します[1]。
申請書はe-Taxソフトで作成・提出するか、書面で作成して業務センターへ送付します。申請書には英語版もあります[2]。添付書類は次のとおりです[2]。
- 氏名または名称、国外の住所、事業内容が確認できる資料
- 特定国外事業者に当たる場合は、税務代理権限証書
- その他参考となる資料
登録できるのは課税事業者だけです。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下で納税義務が免除されている事業者には経過措置があります。申請書に登録希望日(提出する日から15日を経過する日以後の日)を書けば、その日から課税事業者になります。令和11年(2029年)9月30日の属する課税期間までの措置です[3][2]。なお、2028年(令和10年)4月1日以後は、特定少額資産販売事業者はこの経過措置を使えません[3]。
登録されると、国税庁の公表サイトで氏名または名称(法人は本店所在地も)、登録番号、登録年月日などが公表されます[3]。
日本に拠点がなければ税務代理人と納税管理人が要る
日本国内に事務所や事業所などを持たない国外事業者は「特定国外事業者」です[2]。特定国外事業者は、次のいずれかに当たると登録を拒否されることがあります[2][1]。
- 消費税の税務代理の権限を持つ税務代理人がいない
- 納税管理人の届出をしていない
- 国税を滞納していて、徴収が著しく困難である
- 一定の理由で登録を取り消されてから1年を経過していない
- 消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられ、執行が終わるなどしてから2年を経過していない
税務代理人は、税理士法に定める税務代理の権限を持つ人です。税理士などに依頼します。申請のときに税務代理権限証書を添付します[2]。
納税管理人は、日本国内に住所または居所がある人から定めます。「消費税納税管理人届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します[7]。
登録した後も、次のような場合は税務署長が登録を取り消すことがあります[2][1]。登録している間は、税理士への依頼を続け、納税管理人も置いておく必要があります。
- 確定申告書の提出期限までに、税務代理の権限を証する書面が提出されていない
- 納税管理人の届出をしていない
- 期限内申告書を提出しなかったことに正当な理由がない
登録すると免税にならず、一般課税で計算する
適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になっても免税事業者になりません[3][8]。
課税期間の初日に日本の恒久的施設(PE)を持たない国外事業者は、2024年10月1日以後に開始する課税期間から簡易課税制度を使えません。すでに選択届出書を出していても同じです[4]。
登録した小規模事業者向けの2割特例・3割特例も、課税期間の初日に恒久的施設がない国外事業者には適用されません[3]。売上げの税額から実際の仕入れの税額を差し引く一般課税で計算します。
国税庁のQ&Aは、経過措置で登録した場合、売上げの規模にかかわらず登録日から消費税の申告が必要と説明しています[3]。
一方で消費税法には、国内の課税売上げ(輸出免税などのものを除きます)と特定課税仕入れがなく、納める消費税額もない課税期間は、申告書を出さなくてよいというただし書があります[5]。国外取引だけの事業者がこれに当たるかを示した国税庁の資料は、確認できていません。
経過措置で登録すると2年間は免税に戻れない
登録をやめるとき
取引先にとって登録の利点があるのは一部の取引だけ
取引先が登録番号を気にするのは、仕入税額控除に関わるからです。ただ、韓国から行う取引の多くでは、登録の有無は控除に影響しません。取引の種類の見分け方は日本の消費税がかかるかの判定を見てください。
| 取引 | 取引先の仕入税額控除 | 登録の利点 |
|---|---|---|
| 受注制作のネット納品などの国外取引 | 控除の対象は国内で行う課税仕入れなどで、国外取引は当たらない。控除する日本の消費税がない[5] | なし |
| 事業者向けの電気通信利用役務、芸能・スポーツ等の特定役務の提供(リバースチャージ) | 取引先が自分で申告し、帳簿の保存だけで控除する。適格請求書は要らない[1]。申告するのは一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間だけ[1] | なし |
| 消費者向けの電気通信利用役務 | 原則として適格請求書の保存が必要。登録していない国外事業者からの仕入れには、80%・70%などの経過措置も使えない[1] | あり(取引先が一般課税の場合) |
| 日本に来て行う作業など、国内の課税取引(特定役務の提供を除く) | 適格請求書がなければ、経過措置で仕入税額相当額の70%を控除(2026年10月1日〜2028年9月30日)。2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同じ相手からの仕入れが年1億円(税込み)を超える部分は対象外[3][6] | あり(取引先が一般課税の場合) |
簡易課税の取引先は、売上げの消費税額にみなし仕入率をかけて仕入れの税額を計算します。みなし仕入率で計算するので、仕入先の登録の有無は計算に影響しません[6]。
消費者向けの電気通信利用役務でも、一定規模以下の取引先が行う税込み1万円未満の仕入れは、少額特例により帳簿の保存だけで控除できます。2029年9月30日までの措置です[1]。
国税庁は、消費者向けの電気通信利用役務を行う国外事業者に、売上先などを踏まえて登録を検討するよう求めています[1]。
取引先の経理から登録番号を聞かれたら
登録していなければ、登録していないことをそのまま伝えます。国外取引やリバースチャージの対象取引なら、取引先の控除に影響しない理由も添えます。
次の返信は例文です。法令で決まった文言ではありません。自分の取引に合わせて書き換えてください。
返信の例1 — 受注制作のネット納品(国外取引)
お問い合わせいただいた登録番号の件について、ご回答いたします。当方は韓国に住所があり、日本に事務所等を持たない国外事業者で、適格請求書発行事業者の登録は受けておりません。本件は韓国で制作し、成果物をインターネットで納品する取引のため、国外取引に該当し、日本の消費税は課税されません(不課税)。そのため、請求書には消費税額を記載しておりません。
返信の例2 — 事業者向けの電気通信利用役務(リバースチャージ)
お問い合わせいただいた登録番号の件について、ご回答いたします。当方は適格請求書発行事業者の登録を受けておりません。本件は事業者向け電気通信利用役務の提供に当たり、日本の消費税は役務の提供を受けた貴社が納税することとなります(リバースチャージ方式)。この場合、仕入税額控除に適格請求書の保存は必要なく、帳簿の保存で足りるとされています(国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」問27)。
例1は国外取引の扱い[1][5]、例2は帳簿の保存だけで控除できる扱い[1]に基づいています。消費者向けの電気通信利用役務や日本で行う作業では、登録の有無が取引先の控除に影響するので、この例文は使えません。
国外取引の請求書に「消費税10%」を足すこと自体を扱った国税庁の資料は、確認できていません。ただ、日本の消費税がかからない取引なので、上乗せする根拠はありません。詳しくは日本の消費税がかかるかの判定を見てください。
登録を決める前に確かめること
よくある質問
取引先から登録するよう求められたら、どうすればよいですか。
まず、自分の取引の種類を確かめます。国外取引やリバースチャージの対象取引なら、登録しても取引先の控除は変わりません[5][1]。その理由を上の返信例のように伝えます。消費者向けの電気通信利用役務や日本で行う作業で、取引先が一般課税なら、登録の有無が控除に影響します[1][3]。その場合は、登録の負担と取引条件を比べて、日本の税理士に相談します。
登録しても、売上げが少なければ申告しなくてよいですか。
売上げが少ないことだけでは免除されません。登録している間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免税事業者にならないからです[3][8]。消費税法には、国内の課税売上げ(輸出免税などのものを除きます)と特定課税仕入れがなく、納める税額もない課税期間は申告書を出さなくてよいというただし書があります[5]。自分がこれに当たるかは、税務代理人の税理士に確認してください。
簡易課税や2割特例は使えますか。
課税期間の初日に日本の恒久的施設を持たない国外事業者は使えません。簡易課税は2024年10月1日以後に開始する課税期間から使えず[4]、2割特例・3割特例も適用されません[3]。一般課税で計算します。
出典
- [1]
- [2]
国税庁 D1-65 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国外事業者用)
2026年10月20日確認一次資料
- [3]
- [4]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [5]
消費税法 第30条第1項(仕入税額控除)・第45条第1項(確定申告)・第57条の5(適格請求書類似書類等の交付の禁止)・第65条(罰則)
e-Gov法令検索 現行法令(2026年10月20日確認)一次資料
- [6]
国税庁 令和8年度税制改正特集(経過措置の見直し・簡易課税制度)
2026年10月20日確認一次資料
- [7]
国税庁 No.6635 非居住者及び外国法人の申告・届出の方法
令和8年4月1日現在法令等一次資料
- [8]
令和8年4月1日現在法令等一次資料
最終確認日